川内翔保子さま

川内翔保子さま

海の精大島製塩場 来訪日:2010.8.10

“ヨイマワリ”をモットーに活躍されるマクロビオティック料理研究家の川内翔保子先生。
26年前にマクロビオティックと出会ってからというもの、その“究極の料理”をとことん知ろうとしているうちに、すっかりはまっていたと言います。そして、気がついたら料理教室を開くほどに。

その教室はマニホージュと名付けられ、「摩仁宝珠(まにほうじゅ)」=「仏さまが手にしている宝の珠」という意味から来ています。それにあやかって、良いことが次々と訪れる“ヨイマワリ”をたくさんの方に手渡せますように―と。

塩以外では、「紅玉梅酢」がお気に入りという翔保子先生。
お寿司や手水、隠し味にと大活躍の「紅玉梅酢」は料理全般に使える優れもので、200ml入りのビンだとすぐに使い切ってしまうそうです。また夏場には、水に少し梅酢を垂らしたボトルを持ち歩いていらっしゃるとのこと。うんとのどが渇いたらそれを飲んだり、人混みに行ってうがいがしたくなったら、それでうがいした後に飲んだりと。そのうがいが最高に気持ちいいそうです。

今回は、その川内翔保子先生と中学1年生のお孫さんマリトくんが、海の精大島製塩場の見学にいらっしゃいました。

信じてきてよかった「海の精」!

今日の製塩場見学は、一言で言うと、“大感動”でした。
いろいろな塩づくりはテレビや写真で見たことがありましたが、「海の精」の作り方は今まで見たり聞いたりしていたものと、ここまで印象が違うのかとビックリしました。
こんなに手間ひまかけて作られているなんて、思いもしませんでしたから。すべてが人による手作業で、気の遠くなるような工程に感服です。自分がそこの場に身を置くだけでも伝わってくるものがあるのに、きびきびと働く方の姿を追ったり、寺田社長の熱意ある説明を聞いたりすると全然違います。今まで“海の精”を信じてきてよかったと心から思いました。

また、私のお吸い物に欠かせない「青ラベル」(ほししお)の作業場を見ることができて良かったです。料理教室でも「お吸い物がおいしい」ってよく言われます。メイン料理がおいしいと言われるのは普通にうれしいことですが、汁ものがおいしいと言われるのって、とてもうれしいものです。
昆布とシイタケのだしはとりますが、あとの味つけは絶対に青ラベルだけ。もうそれだけでおいしい!そこにお醤油を入れると、逆に味が決まらなくなってしまうのです。
夏場50℃にもなる温室で、毎日ていねいにていねいに攪拌(かくはん)して作られる青ラベル。自分の目で見て、改めて「本物だ」と納得することができました。

絶対無駄にしてはいけない塩

リマ・クッキングスクールでは、お塩だけで、人参をおいしく甘くするということを必ずやります。「赤ラベル」(あらしお)をひとつまみつまんで、左手にのせて、その感触を感じるということ。目で感じて、手で感じて、適塩を探すということはとても大事なことなのです。いわゆる“目秤り”“手秤り”ですね。

また、手についた塩を絶対に洗ってはいけないと教えています。放っておくと生徒さんはみんな手を洗いに行こうとしますが、お塩を洗い流すなんて、バチが当たるんじゃないかと思っています。
「洗うくらいなら、使うお野菜どれでもいいから触ってくださいね。」
「それができなかったら、自分の両手に擦りこんでみて。そうすると、そのうち吸収してなくなりますから。」 と言って、「陽のパワーを取り込むと、ぐっと力が入って集中力が出て、料理教室もうまくいくわよ。」という話をしています。すると、生徒さんは声をそろえて「えー」って驚きますが、一番大事なことだから、はじめのうちに伝えています。
お塩をつかんだ手は、洗おうなんて思わないでくださいね。

夏の暑さに加え、ぐつぐつと塩を炊く平釜の熱気が製塩場内の温度を上げます。

マクロビオティックとのご縁

マクロビオティックに出会ったことに感謝しています。出会いたくても出会えるものではありませんから! 突然の出会いは、今から26年前。今の住まいに越して間もない頃のことです。ヨガのサークルの仲間から、「究極の料理があるのよ。」と言われたことがきっかけでした。 よく聞いてみると、フランス料理でもイタリア料理でも中国料理でもない? しかも、お肉、お魚、卵、乳製品、お砂糖も使わないというもの。そうしたら、もう食べるものがないじゃないって思ったのが、第一印象でした。

メインディッシュは何? 乳製品を使わない?
デザートを食べないと気の済まない食生活を送っていたのに、得意なケーキも作れないなんて…。もうショックのあまり、とりあえずその「リマ・クッキングスクール」に行ってみるしかないと思ったのです。行ってみないことには何とも言えませんから。

まず初級コースに通いましたが、その頃の私には、これが“究極の料理”とはまだ思えませんでした。けれど、初級だけではわからないのではないか、この時点の判断では何とも言えないと思い、最後まで行ってみようと、中級、上級、師範コースと、すべてのコースに通いました。そして、ふと気づいた時は、もうすでにマクロビオティックにはまっていたのです(笑)。

子育てもお料理のようなもの

煮物でも焼き物でも、たびたびフタを開けて、何度も確認するのではなく、“見分けること”、“感じること”が大切です。じっと待たなければいけない時はじっと待ち、ひっくり返す時にはさっと返す。マクロビオティックでは、注意深く見ることが大事になってきます。おなべの音やにおいを敏感に感じ、そのタイミングに気づけるようになって、やっとおいしい料理が作れるのです。

そのタイミングは、子育てとも似ています。子どものわがままを何でも聞きいれるのではなく、本当に必要な時にだけ手をかけてあげれば良いのです。待たなければいけない時はひたすら待ち、“今まさに”という時を見逃さないことが重要です。その子に関しては、たった1回の人生です。お料理は「あぁ焦げちゃった」で済みますが、子育てはそれで失敗しては大変ですからね。

お料理を通して、子育ての練習をすれば大丈夫。食べることは一生だから、毎日の積み重ねでしっかりタイミングを見つけていくことができます。すると、子育てにも生かせるようになると思います。

調味料が大事

“毎日の積み重ね”になるものだけは良いものを食べないといけません。だから、調味料が大事ということもよく生徒さんに話します。体に良い塩を選ぶのはもちろんですが、お味噌もお醤油ももとは塩です。そうなると、もとのお塩もいいものを選ばなくてはなりません。
ところが皆さんは、調味料は毎日使うものだから、少しでも安いものを選ぼうとします。毎日の積み重ねがどれだけ体へ影響するか、蓄積するのかを考えもせずに。 村上会長のおっしゃる“調味料”=“調身料”=“身を調えるもの”。 まさに、その通りだと思います。調味料はただ単に味をつけるものではありません。私たちの身体にとってどれだけ重要な選択になるのかを考えると、調味料だって選ばなくてはいけないことに気づくはずです。

ごはんの最後の一口が食べられないときは、お塩かお醤油をかけて食べています。本物であれば、たったそれだけのことで驚くほどおいしいもの。
今回、製塩場を見学して、海の精は本当にいいもの、最高のものと改めて気づきました。だから、もっともっと広まって欲しいと心からそう思います。

できたての塩がなめられるのも製塩場見学ならではです。

川内翔保子(かわうち しょうこ)プロフィール

1984年、マクロビオティックと出会い、現在のリマ・クッキングスクールで学ぶ。1988年、穀物菜食レストラン「マニホージュ」をオープン。“体と心が喜ぶ”季節感あふれる料理を通して、毎日の台所に、身近な自然のなかに、イキイキ生きるヒントがたくさんあることを伝えている。自身が主宰する料理クラスのほか、「リマ・クッキングスクール」の上級・師範講師も務める。

著書
『あったかい きもち いっぱい』飛鳥新社
『あったかい食と暮らし方レシピ』サンマーク出版
『季節のおたよりレシピ』地湧社
DVD『元気になっておいしくて』

インタビュアー:下田ちひろ(海の精)