高田賀章さま

高田賀章さま

訪問日:2012.11.21

東京・汐留のパークホテル東京にある日本料理「花山椒」の料理長・高田賀章(よしあき)さん。

「花山椒」は農家から直接仕入れた自慢の京野菜を使った伝統京料理を提供されています。日頃からお客様に「優しい味」とよく言われるという高田さんの作る料理は、絶妙な調味料のバランスで成り立つ繊細なものばかり。

「銀座弁慶」の時の親方さんが「海の精」を使っていただいていることもあり、高田さんも自然と「海の精」を選ばれていたそうです。

今回はそんな高田さんに、お話を伺いました。

京野菜が使われる「花山椒」のお料理。

料理のおいしさ、面白さに魅せられた子供時代

料理の道に入ったきっかけは、子供時代からとにかく食べることが大好きだったから。
自分でも料理に挑戦してみたら、料理を作るのも面白かった。親や親戚には料理人関係がいたわけでもありません。だから、料理人を目指すことを初めて父親に話した時には、「板前なんかやめておけ」と大反対されてしまいました。

でも、勉強よりも料理の方が好きだったし、それなら好きな世界に入ってみよう!と料理人になることを決めました。
子供時代に食べたもので記憶に残っているのはやっぱり母の手作り料理。なかでもラーメンですね。母の手作りのスープの味が思い出です。和ダシからとって、そこに豚肉やネギを入れたもの。麺は近所にきし麺や中華麺が売っている麺屋さんがあったから、そこで買いました。今のラーメンとは違う素朴な味だったと思います。

その当時はコンビニはもちろん、弁当屋もないし、レトルト食品もほとんどなかったから、どんな料理も手作りが基本でした。だから味わいに敏感なのかもしれませんね。

京料理との出会いは「縁」

調理師学校に通って料理人になりました。京料理にこだわりをもっていたというよりは、人との縁で気づけば京料理の世界にいたという感じです。その縁のおかげ様で今の私があります。

本格的に京料理を学ぶきっかけをくれたのは、1年ほど働いていた日本航空系列の和食レストラン「銀座弁慶」の親方。親方が、当時新しくオープン予定だった「八重洲富士屋ホテル」で働くため、「銀座弁慶」を辞めることに。その時に一緒にホテルで働く料理人として私を選んでくれました。私も「銀座弁慶」を辞めることになり、オープンまでは時間があったので、京料理の店で修業することに。

親方が新橋の「京味」を一緒に立ち上げてから親交があったので、そこで働きました。そこで住み込みで働きました。「京味」と言ったら京料理の名店として知らない人はいない有名店です。料理界で「西の横綱」と呼ばれる京料理の巨匠・西音松さんを父に持つ、西健一郎さんがいました。親方も西音松さんに京料理を習いたかったみたいで、その思いもあって「京味」での修業を薦めてくれました。

今でも「京味」との関係は続いています。休みの日だったり、自分の予定が空けられる日には「京味」に顔を出すのが普通ですね。年末は「京味」と「花山椒」の両方のおせち料理も作るので特にハード。まず自分の「花山椒」のおせちを作り終わったら、その足で「京味」に向かっておせち作りを手伝いに。そのあと「花山椒」に戻って今度は年越し蕎麦を作るんです。だから、年末はかなり憂鬱です(笑)。

生粋の京野菜農家の野菜

八重洲富士屋ホテル「桂」で12年ほど働き、32歳の時に霞が関別亭「桂」の料理長に。その後パークホテル東京「花山椒」の料理長になりました。
野菜は400年も京野菜を作り続けている農家から直接仕入れています。そこは人からの紹介で知り合えました。今は京野菜も掛け合わせの種子で作っているところも多く、純粋な京野菜の種子で栽培している農家は貴重な存在です。

本当の京野菜の味はやっぱり違いますね!例えば、金時人参なんかも普通におろすだけでも、甘くておいしい。聖護院蕪も水がジワーッと出てくる。市場のものだとそうはならない。野菜を持った時も重みも違うし、中の身の詰まり方も違う気がしますね。
メニューを考える際にも、まず農家に電話して旬の野菜は何がある?と確認してから考えます。自分で市場に買い出しにも行きます。その時の旬のものから、いいものを探すようにしています。

後は「これはうまい!」と思ったものを自分で試してみます。
今日の「柚占地(ゆしめじ)」(大ぶりな大黒しめじと京菜を柚子と酢立の香りでさわやかに仕上げたお吸い物)なんかもそうですね。やっぱり自分が味わった「おいしさ」をお客様にも味わってもらいたい。そういう思いで自分の味の記憶をもとに料理を作っていきます。

「柚占地」。「最後の一滴までおいしく」という高田さまの思いが伝わってくるような絶妙な味わいでした。

「海の精」はずっと使っています

料理の味の決め手は、素材、そして調味料とダシです。
「海の精」との出会いは親方から。富士屋ホテルでもずっと「海の精」を使っていたから、自分の店でも自然に「海の精」を選んでいました。
親方が「海の精」を選んだ理由は、お店の常連のお客様から紹介されたから。それまでは違う塩を使っていましたが、「これはいいよ!」と教えてもらったみたいです。「海の精」を使い始めてからは、「海の精」一筋ですね。親方曰く、「海の精」は「旨みが違う」ということで愛用しています。

料理の味付けは砂糖や塩、醤油などの調味料のバランス、やっぱり塩梅が大事だと思います。塩は料理の味わいを柔らかくしてくれる役割。醤油は見ればどれだけ入ったか“感覚”で分かるけれど、塩や砂糖は目に見えないから難しいですね。
「煮方(板前で煮物を作るひと)20年」と言うけれど、調味料のバランスを考えた味の持って行き方は自分自身、確かに20年続けてやっと出来るようになったと思います。

例えばお吸い物でも、まず一口目がおいしいだけでなくて、最後飲み終わるまでおいしくなくてはいけない。やはり味わいのバランスが大切になってきます。塩がちょっと少なくても、そのバランスは崩れてしまうんです。
店以外でも、「海の精」が活躍していますよ!
休日も4人の子どものために料理をしますが、そこでも「海の精」を使っています。
洋食、和食、鍋に雑炊、なんでも作っています。365日、料理から離れることはありません。
料理はやっぱり作り続けることが大切だと思います。たとえ休日の料理でも真剣に作る。
そうすることで自分の力もついていくと思っています。

今あるものを大切に、ひたむきに頑張る

奇抜な新しいことに挑戦するというよりは、今後も謙虚でいつづけたいですね。
自分が料理を作っていてうれしいのは、やっぱりお客様に喜んでもらえた時。
「花山椒」でミシュラン1つ星を獲得できました。お客様にも最近は「味が落ち着いてきたね」とお褒めの言葉をいただくこともあります。自分を高めながらやり続けることで、通ってくださるお客様にもその成長を喜んでもらえます。
新しいことも積極的に取り入れようと思っています。
日頃からおいしいと言われるお店は実際に自分で行ってみたりもします。

また、3か月に1回くらいのペースで、都内の和食料理長が有志で集まっての料理勉強会もしています。そこは40代とか50代の同世代の料理長が多くて、そこで情報交換をしてお互い切磋琢磨する場として活用しています。この勉強会も、「京味」の手伝いもとても勉強になります

謙虚さは忘れずに、常にアンテナを張って、新しいものを吸収していきたいと思っています。

高田賀章(たかだ よしあき)プロフィール

ホテル日航成田内銀座弁慶、
八重洲富士屋ホテル京料理「桂」を経て
1995年「霞ヶ関別亭桂」料理長。
2003年パークホテル東京「花山椒」料理長に。
2008年にはミシュラン東京一ツ星を獲得。

【お店】
花山椒

編集後記

「花山椒」はパークホテル25階にあり、都内を一望できる「スタイリッシュ」という言葉がよく似合うおしゃれな店内で、まずその空間に圧倒されてしまいました。

日頃からお客様にも「優しい味」と言われるということですが、高田さんが作る料理はそんな都会的で洗練された空間にすっかり緊張してしまった私を、ホッと落ち着かせてくれるような本当に「優しい味」でした。

また、「花山椒」で提供される料理は目に美しく、それでいて身体にゆっくりと沁みていくような奥深い素材の味わいを生かした料理の数々。

お話の中でも出た「柚占地(ゆしめじ)」という椀物も、しめじと京菜のみとシンプルな食材ですが、盛り付けも美しく、見入ってしまいました。しめじに添えられた京菜も可愛らしい昆布の籠に入っていて、食べるのももったいないくらい。大黒しめじの味わいがしっかり感じられながらも出汁の味わいも絶妙で決して素材を邪魔することなく、高田さんが目指されていたように、「最後の一味までおいしく」いただきました。

そんな料理の「優しさ」は、微妙な味わいのバランスの狂いも許さない高田さんの丁寧な料理から生まれているのだと今回お話を伺う中で納得させられました。

料理を召し上がった後には必ずお客様とお話をするという高田さんですが、料理の味だけでなく、訪れるお客様一人ひとりにも優しいお店なのだなと感じました。

インタビュアー:折笠美穂(海の精)