阿部一理さま

阿部一理さま

海の精大島製塩場 来訪日: 2010.1.5

面白く! 簡単明瞭! インパクト! そんな講演で人気の健康指導家・阿部一理先生。
30数年前にマクロビオティックの世界に引き込まれ、虚弱な幼少青年時代を過ごしていたのが一変。今では全国で健康指導をされています。

のべ1万2千回を超える講演を通して、「食を見直すことは、健康のためはもちろん、生き方であり、哲学である」と、“食”の大切さを提唱されています。
そんな阿部一理先生が、海の精大島製塩場にいらっしゃいました。

お菓子に囲まれていた子ども時代

生まれ育った網走は、冬になると零下30度にもなる極寒の地。子供がいっぱいいるのに、お菓子を食べさせてあげられないのはかわいそうということで、実家は駄菓子屋さんを営んでいました。
子どもの好きなものは、子どもの方が分かるもの!と当時まだ小学生にも関わらず、私が仕入れを任されていました。どこのお菓子問屋も、私にお菓子を買って欲しいものだから、たくさんのお菓子のプレゼントを持ってきてくれるんです。どれが売れるのか、たくさんのお菓子を食べ比べていたので、私はいつの間にか“お菓子の目利き”になっていました。
そんなわけで、お菓子を毎日食べていたものだから、虫歯は10何本もあり、ひどい冷え性。おまけに100日咳が300日治らないほど虚弱で、つらい幼少年時代を過ごしました。だから、その頃からずっと、健康になりたい願望は強かったのかもしれません。

また、ソロバンが得意で、中学生の時には一級を持っているほどでした。近所の人はソロバンを教えてくれる人を探していましたので、高校一年の時にソロバン塾を開いたのです。まずは、週5回が通常のところを週3回にしました。同じ月謝を取って回数を減らすなんて、そんなバカな!という声もありましたが、私は、週3回で同じだけの成果をあげようと試みたのです。考え方が斬新だったので、高校一年の時点で、100人以上の塾生に教えるまでになっていました

マクロビオティックとの出会い

それは、27~8歳のころでした。上京し、学習塾を経営していたのですが、塾生のお母さんに「自然のものを食べなきゃだめよ。いいものを食べなきゃ健康になれないわよ。」と言われたのが、食事を見直すきっかけとなったのです。
そして、勧められた森下敬一先生の『玄米食のすすめ』を読んでみると、「自然のものを食べましょう。生命力のある玄米を食べましょう。白砂糖、白米、化学調味料、肉類はとらなければならないものではありません。」というようなことが書いてありました。それは当たり前のことだとすぐに理解できたので、さっそく圧力釜を買って、まずは玄米食での生活に変えてみました。私は何の抵抗もなく食べられましたが、わが子は寝事で「玄米なんて嫌だー」とよく言っていたものです。

30数年前、まだ自然食品店は少なかったのですが、主食だけでなく、調味料も良いものに変えなくてはと思い、当時の自然食品のメッカ、早稲田自然食品センターに行ってみました。そして、そこで出会った一冊の本が私を“食養”へと導いたのです。その桜沢如一先生の本が本当に面白くて、もっと読みたいと思い、マクロビオティックの普及団体「日本CI協会」まで本を買いに行きました。
それからというもの1800人の塾生がいた塾は弟にまかせ、日本CI協会の社員として、マクロビオティックの世界へと足を踏み入れていったのです。

人は変わることが出来る!

たまたま代役として務めた講演会がきっかけとなり、全国の自然食品店から、あっという間に講演の依頼が来るようになりました。それからは、「みんなが聞きたい“食箋”」を中心に、面白く!簡単明瞭!インパクト!をモットーに、いい塩、いい水、いい五穀百果、この3点がいかに大事かを訴え続けてきました。

「食→血→肉」
食べる物を変えることで、血が変わり、そして肉体の細胞が変わるのです。赤血球は120日、白血球は7日で、体全体でも1年あれば、ほとんどの細胞が入れ替わります。
食養=マクロビオティックの目的は、判断力を高めること。病気にならないようにするにはどうするか、を考えることが大事なのです。結局は、生活習慣をどうするのか、特に食生活習慣に鍵があります。“食”は、健康や平和という問題にもつながる大事なものです。早死にしないためにも、おばあちゃんたちが言っていた「食べ物こそが命になるんだよ」ということを伝えています。
そして、「調味料から変えてみれば?」と、入りやすいところから、少しでも自分の食生活に目を向けてもらう。それが啓蒙活動になればと思って、今も講演活動を続けています。

21世紀の「海の精」

みんなで作り上げてきた“海の精”の集大成に、今日は感動しました!
「海の精」のことは30年も前からよく知っています。素人が苦労を重ねながら、本当によくぞここまで作り上げてきたと思いました。途中の苦労の30年はわからないけれど、当時の実験的な塩田だったものが、現在7番目に建設中という立派な塩田を見て、「海の精も、ここまできたか!」と感心しました。

現在建設中の7番目の塩田の前にて。

「海の精」は、21世紀に使って欲しい塩!

料理業界が塩を見直し始めている今、すべての食材を見直すきっかけになると思います。それは、塩が食のあり方、ひいては生き方までもリードしていくということです。
そのために、4月から施行になる塩の公正競争規約を上手に活用して、「海の精」の製法、成分、他の塩との違いを分かりやすく伝えることが、“海の精”の使命であると思います。工場まで足を運んでもらい、自分の目で見てもらうのが一番です。引き続き、「海の精」のような理想的な塩がいかに大切かを、理論的に伝えていって欲しいと思います。

阿部一理(あべ いちり)プロフィール

1944年、北海道網走生まれ。虚弱な幼少青年時代を送るが、27歳のとき、マクロビオティックの創始者・桜沢如一の書物に出会い、食養の世界に興味を持つ。食事療法、民間伝承医学、気功、運命学を研究し、現在は講演活動を中心に、全国を飛び回る。わかりやすく、すぐ実践できる、さらに独特のユーモアあふれる講演は大好評。

著書
『古くて新しい伝承療法』(メタモル出版)
『水 最後の選択』(メタモル出版) ほか

編集後記

阿部先生が見学された日に、静岡県浜松市で自然食品店“酒&FOODかとう”を営まれている加藤さまご夫妻が、大島製塩場の見学にいらっしゃいました。医食同源を目指し、こだわりの酒と伝統調味料や、伝統調味料を使ったお惣菜などを販売されています。

本当に自分たちの良いと思ったものをお伝えしたい―。そのために、毎年、お正月休みと夏休みを利用して、全国の蔵元やメーカーなどの工場を見学されているとのことです。今回は、海の精の塩づくりを見に来てくださいました。

お店では、販売されている伝統調味料を使ったお惣菜が人気を呼んでいます。それらの調味料を実際に食べて知っていただきたいとの想いから、お惣菜を始められたそうです。

人気商品は、海の精を使ってご主人が握る“おにぎり”。このおにぎりのファンである小学3年生の女の子からの要望で、彼女の通う目の前の小学校から社会科見学に来たほどとのことです。「子どもの舌は正直だから分かるんです。うれしいのですが、“お母さんのおにぎりよりおいしい”とまで言われると、困っちゃいます。」とのこと。

大島製塩場を見学して、「感激しました!良いものはこのようにして作られなくてはいけない、という方程式通りの会社でした。海の精を扱って18年たち、少しずつ愛好者が増えてきましたが、より多くの人に、“命の塩”を知っていただくつもりです。」との身にあまるお言葉と、海の精への新たな想いも語っていただきました。

この加藤さまご夫妻の食に対するパワーで、これからも皆さまを幸せにしていっていただきたいと、心から感じました。

インタビュアー:下田ちひろ(海の精)