たなかれいこさま

たなかれいこさま

海の精大島製塩場 来訪日:2010.4.5

料理は“原始脳”でする! 612食べ物教室のたなかれいこさん。
ニューヨークで「自然食」に出会ってからというものの、食べ物の世界から離れられなくなってしまったというたなかさん。ケイタリングサービス、レストラン、料理教室など28年間に渡る自らの食経験を通して、自然にそった健康と暮らしを求めている人のために、食べ物で体も心もハッピーになれる料理と暮らしを提案されています。
いい素材、いい調味料さえあれば、みんながニコニコになって、体にもプラスになるような料理が簡単にできると言います。
今回は、たなかれいこさんと612食べ物教室の生徒さんが大島製塩場にいらっしゃいました。

612食べ物教室の生徒さんと

自然の成り行きで「海の精」

もう忘れるくらい昔、塩を売ってくださいと言って電話したのが、「海の精」との出会いです。情報とか知識があってではなく、自然の成り行きで出会ったのだと思います。
味と言うのは食べた瞬間、食べたあとの舌の残り具合で決まるものだから、食べておいしかっただけでいい。反対に、それ以上のものが残るというのはちょっと。おいしさは口からすぐ消えて、記憶に残るだけがいいんです。今日はさっきから「海の精」の味見をたくさんしているけど、水など飲まなくても口に残りません。それが本当に「いいもの」ということ。
私は特に「ほししお」がお気に入りで、豚のスモークをしたときの発色の良さはほかにはありません。

海の精は、塩だけでなく加工品の力もすごいと思います。うちでは、生しぼり醤油(現「海の精 国産有機・旨しぼり醤油」)、豆味噌、天日干したくあん、紅玉ねり梅など、いっぱい使っています。農薬不使用や有機栽培の素材を使った加工品なんてほとんどないのが現状な上、加工品に伝統製法の塩を使っている、まっとうなものはなかなかありません。

本当は、高級エステに行ったり、化粧品を買ったりするよりも、ちゃんとした伝統調味料や食材を買う方がはるかに安く、カラダも心もハッピーになれます。高いって言われているけれど、2重3重にお得なのだから、もっとそんな魅力を伝えられればなと思っています。

料理の世界に入ったきっかけ

もともと食いしん坊ではありましたが、きっかけは28歳でニューヨークに1年間暮らしていたころ。
向こうでは、日本食を食べようとはまったく思いませんでした。けれど、現地のアーティストの友達が味噌だったり、そばだったりと、そういうものを食べているんです。彼らは日本人より日本食的なものを食べていました。だから、持ち寄りパーティには、料理術もないのでチャイナタウンで買った魚に、ただ長ねぎとしょうがを詰めたホイル焼きを持って行ったら、大好評! 日本食を見直すきっかけにもなったし、みんながとても喜んでくれるので、料理をするのが楽しくなりました。

ところが、日本に帰ってきてからというものの、スーパーで野菜を買っても、外食してもちっともおいしくないんです。いっぱい探し回って、どこでおいしい野菜が売っているのかと思ったら、それは自分の住んでいたすぐ近くの自然食品のお店。しおれていたほうれん草なのに、洗ってゆでるとすごくおいしい!どうしてなの?  味の違いは何? って探究し始めたら、食べ物から離れられなくなっている自分がいました。食べ物って面白そうだし、奥が深そうだし、仕事にしてしまえば片手間ではなく、ずっと関わっていられる! そうだ仕事にしてしまおう! と思いで始めてこんなに長く続くとは予想外。

「天才」だからできること

それでまず始めたのがケイタリングサービス。ニューヨークにいた頃そういう仕事があるのは見ていたので、料理の経験もないのに勢いでスタートさせてしまいました。パーティの企画段階から、デザイン、テーブル、お料理からサービスまで。家でもほとんど料理なんて作ってはいなかったけれど、天才だからできちゃったんです(笑)。

実は、幼稚園の前から小児リウマチや肺結核の一歩手前などで、ずっと病気の百貨店でした。ステロイド系の薬や子供には強い薬もいっぱい投与され、本当に医者は薬づけにするばかりでした。高校生の時、薬をもらって注射をしてもらって、天井を見てずっと寝ているのに、自分の感じとしては下降状態…。どうしてだろう?何でなんだろう?って考えました。どうせ下降しているならもう薬も注射もいらない。そこで、医者の注射や点滴を拒否し始めたんです。特に因果関係があったわけではないけれど、自然に原始脳がそう判断していました。
私はずっと学校も休みがちだったので、もともとアカデミックが入っていなかったから、人よりも原始脳が活発化していたんだと思います。
料理はその「原始脳」でできるらしいのです。みんなは知識をいっぱい左脳にためたけれど私はそうではなかったから、料理の経験がなくたって、いきなり料理ができて、いきなり仕事でやってこれたというわけです。

自分の体を通せば分かること。

最近、脳ブームの影響もあってその手の本を読んだら、自分が料理を全部その原始脳でやっていることが分かりました。誰でも料理ができるという原始脳を持ってはいるけれど、みんな一生懸命に勉強をしすぎて、理性脳を活発にさせたがために、原始脳が寝ちゃっているだけ。私の他の人との違いはそこだと思います。

私の料理はとっても簡単!  パーティやレストランのお客様は、すごく料理に手をかけてあれやこれや工夫をしたものだからおいしいと勘違いをされます。でもそうではなくて、いい素材、いい調味料さえあれば、みんながニコニコになって、体にもプラスになるような料理が簡単にできるんです。だから、教えるとか先生の立場になるのは嫌でしたが、私が体験したり、天才力でできることを伝え、みんなから天才力を引き出してあげるお手伝いをしてあげたいと思って、料理教室も始めました。
おいしいものは、全部自分の体を通してみたら分かること。そういう体験をしていただくだけで、みんな天才力で料理が出来るようになるんです。それは私の力だけでなく、いい素材、調味料があってからこそできることなのです。

塩にはまると奥が深い

できたての塩の味をじっくり味わっていただきました。

今日「海の精」に来たからではないけれど、「まず調味料お塩から変えたらどうですか」と言います。すると、「自然な塩はもちろんとっています。けれど、減塩しています。」と言う答えが返ってくるんです。ちゃんとした塩だったら自分が食べたいだけ、好きなだけ食べていいのに、みんな頭のどこかに「減塩」という言葉があって、とても不思議です。

だから、教室ではまず塩のテイスティングをしています。製法や海域によって塩は味が違うってことをわかってもらいたくってやっていますが、みんな食べれば意外とわかるものです。また、その人一人一人で適塩が違うように、いい塩梅(あんばい)というものはそれぞれ違うもの。その人が作ったときにおいしいと思えることが一番なのです。だから、これがおいしいんじゃないかと思える幅を「612食べ物教室」で体験してもらって、あとは自分で手に入れた食材で、自分のイメージした味に持っていくことが大事なのです。それが料理の基本中の基本、そして、それがすべてです。食べるのはたった一瞬の味覚の話だけれど、その食べたもので細胞が元気になっていきます。自分を大切に思ったら、自分のお財布からどういう食材を買えばいいかがわかってくるものです。 食べて楽しくて、食べて細胞が元気になっていく感じを612では体験できます。そして、どんどん若返って、体も心もハッピーになり、すべてが良い方向にいく方法を伝えていきたいと思っています。

製塩場が気持ちいい!

製塩場には、黙っていてもニーッと笑ってしまうような気持ちよさがありました。本当はずっと前から来たいと思っていましたが、根が不精で、今日はやっと見に来れた!という感じです。
ただ単に海の近くだから気持ちいいと言うわけではなく、海水が濃縮されていく工程を見るにしても、製塩場内に漂う空気にしても、私の体がとても気持ちいいって思うんです。

日々の料理にまっとうでおいしい塩を使うことができるのは、今日見た“海の精”の熱い想いと、たゆまぬ行動の賜物ということが分かりました。感謝の気持ちでいっぱいです。

たなかれいこ(たなか れいこ)プロフィール

食のギャラリー612代表。CMスタイリストを経て、1年間滞在したニューヨークで「自然食」に興味を持ち始める。1982年、ケイタリングサービスで起業後、レストランを経て現在、教室を中心に、自然にそった健康と暮らしをもとめている人のために、「あたりまえにおいしい直球料理と心地良い暮らし」を提案している。 また、2000年より長野県蓼科(たてしな)で無農薬・無肥料・不耕起の畑“612ファーム”で野菜を育てながら、「畑の教室」も開催している。

著書
『穀物ごはん~自然のチカラでおいしく、健康!』(青春出版社)

インタビュアー:下田ちひろ(海の精)