宇田成徳さま

宇田成徳さま

海の精大島製塩場 来訪日: 2009.12.7

特許・実用新案出願件数490件、登録件数180件以上を誇る発明家・宇田成徳さん。
実は、どこのご家庭にもある洗濯機の排水用のじゃばらホースは、宇田先生の発明なのです。その他にも数々の発明で松下電器(現・パナソニック)に貢献されました。

定年後も「1年に1つは発明をする」をモットーに発明で活躍される一方、「目からウロコの塩まき農法」などユニークなテーマで講演活動をされています。「塩まき農法」は最近一部で注目を集め、実践されている農家さんの野菜が、テレビで紹介されるほどまでになりました。

また、宇田さんの趣味は「親孝行」「よろず相談承り」。その人のニッコリした笑顔を見たいから、趣味とは言え、いつでも真剣に取り組まれています。それが発明にも活かされ、宇田さんのすべての生き方につながっているとのこと。
そんな宇田先生が、大島製塩場にいらっしゃいました。また、大島でも「目からウロコの塩まき農法」を講演していただきました。

「目からウロコの塩まき農法」の講演

特別講演会には、たくさんの地元大島の方にお集まりいただきました。

発明は悲しいまでに簡単!

松下電器入社当初はダメ社員でした。発明に結びつくようなアイディアなんて思い浮かばず、テレビを見たり、スキーをしたりして遊んでいる方が楽しい! 4~5年の間はそんな毎日を送っていました。
ところが、私を変える二つの出来事によって、面白いほどにアイディアが浮かぶようになったのです。

一つは、松下幸之助さんの本が「素直になりなさい」と教えてくれたこと。素直になると客観性が身につくため、「自然の法則」に従って物事を考えられます。だから、「自然」が分かれば、誰でも「創造」ができるのです。葉っぱはなぜ緑なのか?もみじはなぜ赤くなるのか?恐竜はなぜ滅んだのか?など自然現象の解明が、製品の発明へと活かされています。

もう一つは、結婚したばかりの妻の影響。遊んでばかりいる私を見て、「男は命をかけて働くもの!」と背中をたたきました。恥ずかしながら、それからというもの、真剣に仕事に取り組むようになりました。

発明は、誰が気づいてもいい、本当に簡単なこと。それが思いつくかつかないかは、“思い”の強さなのです。
あれから43年間、私は自分の目標を毎日書き続けています。祈る心を持ったら、それは100倍になるだけの力を持っています。“思い”は物質化するのです。だから、私はクリエイティブでいられるのだと思います。

パッとひらめき! 塩まき農法

私は200坪の家庭菜園に、150kgのほどの塩をまいています。人にはまず10aに25kgとすすめますが、それでも、まくとまかないでは一目瞭然。なんとも甘く! 収穫量は5割増し!じゃがいもだってLサイズから3Lサイズになりました!
人間に塩が必要なように、植物にも塩がなくてはならないと考えついたのです。

“塩まき農法”を始めたのは平成7年。きっかけは、娘さんがアトピーだという友人の相談からでした。
昔はアトピーなんてなかったのに、どうしてアトピーになるのだろう? と考えました。そして、50年前はなかったものだから、暮らし向きの変化に関係があるのではないかと思ったのです。

命は海から誕生したのだから、海のミネラルすべてがなかったら健康は保てない―。アトピーに海水浴が良いと聞いたことはあるけれど、それだけでなく内側からもミネラルを取り入れるべきだ!そこでハッとひらめいたのです。それは、妻がずっと作ってくれている“ふりかけ”でした。
昆布に、ちりめんじゃこに、削りカツオなどどこからどう見てもミネラルたっぷり!3ヶ月考え抜いた末に導き出した答えでしたが、見事、これでアトピーが改善されました。人も海から生まれたものだから、やはりミネラルが不可欠だったのです。

目からウロコの塩まき農法

20年前、ひょんなことから土地を買うことになり、とりあえず家庭菜園を始めました。やる以上は、プロに負けてたまるか! という強い思いを持って取り組みました。
アトピーの一件から、自分や知り合いの農園で“塩まき”を始めたところ、すぐに想像を超える効果が見られました。その後、「目からウロコの塩まき農法」と題して講演を行い、「とりあえず、塩をまくところ、まかないところで比べてみてください。始めて2週間ほどで驚くほどの効果が見られますよ!」と言い続けました。
すると、全国からぞくぞくと喜びの声が届くようになったのです。

イモが3倍取れた上に甘くなったり、ナスもピーマンも実が2倍になったり、桃やお茶がうんと甘くなったり、と嬉しい報告ばかり。中でも、淡路の成井さんの玉ねぎはすごい人気で、「千疋屋」で1個250円で売っています。玉ねぎの平均糖度は8度と言われているところ、成井さんの玉ねぎはなんと18度! すいかやみかんよりも甘いんです。

やはり塩の効果はすごかった! 塩は絶対に必要なものなのです。
塩田が全廃されてしまったのとちょうど同じころ、農村では田畑の肥料として下肥えしもごえ(糞尿)を止め、化学肥料を使い始めました。その途端、身体からも畑からもミネラルが消えてしまったのです。
300年続く宇治のお茶屋さんでは、下肥えが手に入らなくなってからというもの、お茶の味が変わってしまったと悩んでいました。そこで“塩まき”を勧めてみました。すると、どれだけ頑張ってもだめだったお茶が、次の年に甘くなったのです。
下肥えはもちろん塩分を含んでいます。その塩分が、作物をおいしくしていたのです。
これで“塩まき農法”の発明にも確信が持てました。

海の精との出会い

それは今から半年前(2009年7月)でした。村上会長(当時)著の『日本人には塩が足りない!』に感銘を受けた知人が、“塩”つながりということで、本を紹介してくれました。それを読んで以来、自らの体に取り込む塩は「海の精」を使っています。“塩まき農法”からも分かるように、塩は絶対必要なものなのです。また、「海の精」を使ってからというもの、妻も孫もおいしいと言って喜んでいます。子どもの舌はなんと言っても正直。その孫がおいしいと言っているのを見て、本物の塩なんだなと感じています。

今回初めて大島を訪れて製法や設備を見てみても、本当に工夫されていることがよく分かりました。
今新しく取り組んでいる試みにも大きな期待が持てました。その試みとは、現在の塩まき農法に「にがり」を一緒にまくことを村上会長と寺田社長に提案され、家庭菜園のニンニクに「にがり」をまいているのです。
もともとにがりの主成分であるマグネシウムは、細胞分裂を促す作用を持っているため、大きな作物ができます。ただ、その大きさに味がともなってこないというのが課題だったが、塩を一緒にまくことでミネラルバランスが整いうまくいくのではないかと思っています。
「にがり」がどれほどの効果を上げるのか、今から6月の収穫が楽しみです。

宇田成徳さん

海水を濃縮する「立体塩田」を興味津々に見る宇田さん。

宇田成徳(うだ しげのり)プロフィール

1939年、広島県福山市生まれ。広島大学工学部を卒業後、松下電器産業に入社。多数の発明を重ね、特許・新案出願件数490件、登録件数180件以上を誇る。1996年、小型モーターの研究でアメリカR&D100Award(米国のR&Dマガジン社が主催する「過去1年に実用化された優秀な製品・技術」100選)を受賞。
定年後は宇田技術研究所を創設し、発明家として活躍する一方、講演活動にも力を入れ、聴衆の人気を博している。

著書
『病気になりたくてもなれない話』(致知出版社)
『就職試験に落ちたくても落ちられない話』(致知出版社)
『フロー体験とグッドビジネス:仕事とよろこび』(世界思想社)