岩崎弘之さま

岩崎弘之さま

訪問日:2010.2.18

イタリアとの“文化交流”を目指す㈱文流が、30年以上前に “食”の文化交流として開いたレストラン「リストランテ文流」。
現在、高田馬場と国立の2店舗があります。
「海の精 あらしお」を愛用していただいているという総料理長の岩崎弘之さんにお話を伺いました。

料理はプロセスが重要! その要に塩があります。

「レストラン文流は文化交流が基盤にあるので、年に数回、イタリア人シェフを招聘し、新しい料理技術を学び、味の確認を行っています。同じ材料を使っても人が変われば味も変わります。プロセスがいかに大事か、常日頃からプロセスの重要性を若いスタッフに指導しています」と総料理長の岩崎弘之さん。

メニューを見るとおいしそうな素材が目に飛び込んできます。

「野菜たっぷりミネストローネ」「イワシとウイキョウ、松の実、レーズンあえスパゲッティ」「キャベツとアンチョビのスパゲッティ」。野菜もふんだん。

大人気のパスタは定番だけで10種類あり。岩崎総料理長においしく作るコツをうかがいました。
「パスタは茹でるときの塩加減が何より重要です。塩を入れずに茹でてもまったくおいしくありません。また、塩は茹でたあとでかけても麺に塩味がのっていかないのです。塩をしっかり入れた熱湯で茹でることで、麺じたいに塩味がからまっておいしくなるのです。シンプルなペペロンチーノなどはそれが顕著にあらわれますね。麺の塩味が決まっていれば、オリーブオイルとにんにくだけで味がピタリと決まります!」

塩味は始めにしっかりがコツ

岩崎総料理長と海の精の出会いは10年以上前。
「『おいしい本物を食べる会』で“海の精というおいしい塩があるよ”と教えてもらい、1回使ってみたんです。そしたらおいしいじゃないかと」

また、塩味は料理の要になるだけに、使い方にテクニックがあるといいます。
「最初から塩味は決めません。下味を大事にしています。野菜を炒めるときに塩をまず少しふり。そして炒めて、また少しだけ入れるという具合です。塩味は段階を踏むたびに、全行程で少しずつ加えていくようにしています」

例えば肉料理は「肉の下味+ソースの塩味、すなわち、塩加減と塩加減のバランスが大事」だと力説。煮込み料理もしかり。鶏肉の煮込みも鶏肉に下味をつけてソテーし、塩を少し入れたトマトソースで煮込んであげる。煮込んだ時にソースと下味がバランスよくあえばOK。
「全工程で塩味をつけることで、煮込み料理の味がグンと変わってくるのです。料理を美味く仕上げるコツは、プロセスのたびに味見をするということです。段階をふんで変わっていく味を、自分で楽しむためにもね(笑)。その時に塩を調整するのです」

塩味はいっぺんに決めるのではなく、段階をふんで調節が大事。
「若いシェフによくいうのが、味見をしなさいと。例えばミネストローネはいい例です。火を通す段階でどんどん味が変わってきます。塩が足らない、そうしたら少し入れる。そうして煮つまるタイミングで味が確定していく。それがプロセスで味見をする醍醐味なんです。確認のときに塩。いっぺんで塩味を決めようと思うと失敗します。必ず何度も味見すること。これが料理上手への近道です!」

郷土料理がベース。野菜たっぷりのやさしい味。

リストランテ文流には定番とその時々のメニューが用意されています。前菜には野菜や穀物が使われたヘルシーなものも勢揃い。
イタリア産無農薬栽培のスペルト小麦を使ったサラダには、セロリ、きゅうり、トマトが入り、オリーブオイルと塩で調味されています。

野菜のマリネはカラーピーマン、ズッキーニ、タマネギがじっくり丁寧に火が通され、やわらかな甘みのハーモニーが奏でられています。
定番スープのミネストローネには、トマトとベーコンは入っていません。指導してくれたイタリア人シェフのレシピにはトマトとベーコンが不使用。じつはこの2種を入れないレシピのほうがイタリアではスタンダードなのだそうです。

これぞイタリア郷土料理!というべき存在のミネストローネ。白いんげん豆に季節の野菜がたっぷり入った具だくさんスープ。とってもヘルシーでやさしいおいしさです。

その代わり、ミネストローネにぜったい欠かせないのが白いんげん豆。というわけで、豆+野菜たっぷり!野菜と豆のエキスにシンプルな塩味。365日食べても飽きない、まさにイタリアの郷土料理!を感じる味です。

なるべく体にいいものを

人気のパスタはいくつもありますが中でも“イワシとフェンネルと松の実、レーズンあえスパゲッティ”はリピーターの多い一品。松の実と干しレーズンでコクと甘みをつけたシチリアの郷土料理です。

イワシを最初にオリーブオイルでしっかり炒め、香りのいいフェンネルで爽やかさをプラス。パスタはもちろんアルデンテ。「シチリアのシェフから直に教わった料理!」と岩崎総料理長。

フェンネルをはじめ、バジリコ、たんぽぽ、ルッコラなど香り系野菜は、沖縄県那覇市・森山農園からの直送。農薬不使用栽培だそうです。
沖縄の強い日差しは南イタリアに近くイタリア野菜の栽培に適しているそう。また、沖縄原産の島唐辛子はカラブリア産の唐辛子に似ていると。「毎回、森山農園からの箱をあけるたびにワクワクしてます。予期せぬ野菜も入ってますが(笑)、届いた野菜は本日のおすすめとして紹介します。箱には何が入っているのかわからないですが、野菜を見てその場でメニューを考えるのがまた楽しいです。料理することに幸せを感じる瞬間ですね」

時季にしか会えないとっておきの野菜もいっぱい。お皿の上でイタリアの季節感が味わえるリストランテ文流です。

森山農園の「たんぽぽ」。イタリア原産の種で、大きく長い葉にしっかり入ったギザギザが特徴。苦み、うまみがたっぷり!

岩崎弘之(いわさき ひろゆき)プロフィール

1964年 神奈川県生まれ。
1983年 学校卒業と共に文流へ入社。
1987年 シエナ・イタリア料理学院第一期生としてイタリアへ留学する。
1996年 リストランテ文流国立店料理長に就任。
1999年 リストランテ文流・三代目総料理長となり、現在に至る。総料理長として2店舗を管轄。また、クッキングスクールや調理師専門学校などで講師を務める。

【お店】
リストランテ文流

インタビュアー:下田ちひろ(海の精)