<4> 「海の精 玄米味噌」の物語

海の精 玄米味噌(国産有機)

今回は、杉桶でじっくり1年以上熟成させた「海の精 玄米味噌」。「海の精あらしお」が誕生してはじめて、伝統海塩「海の精」を使用し開発されたこだわり味噌です。玄米・麦・豆の生(なま)味噌3種、「旨しぼり醤油」の製造委託先であるヤマキ醸造株式会社の木谷(きたに)富雄代表(故人)に伺った当時の話やこだわりのポイントを交えながら、「玄米味噌」をご紹介します。

伝統海塩があってこその“伝統食品”

実は、全国の小売店で購入され、一般家庭で消費される塩は、食用塩全体の約1割に過ぎません。これは、日本人の場合、味噌や醤油などの含塩調味料で調味する比率がとても高いからです。しかも近年、加工食品の割合はますます高くなり、純粋な塩のみの使用量はさらに低下しています。つまり、その加工食品に含まれる塩の品質こそが、味だけでなく健康にとってもますます重要になるのです。

特に、私たちの祖先が長い年月をかけて育ててきた味噌や醤油、漬物や梅干、あるいは豆腐といった世界に誇るべき伝統食品は、伝統製法の塩や苦汁があってこそ、本来の味と滋養を醸し出します。

ミネラルが発酵を助ける

昭和50年代、試験生産塩として「海の精」の会員配付がはじまった頃、伝統海塩の品質が加工食品の仕上がりにどのような影響をもたらすかの製造試験をしてみよう、ということになりました。製造“試験”なので、ごく少量からのスタートでしたが、伝統海塩が求められているように、うまく行けばだんだんと伝統海塩を使った調味料の要望も高まってくるだろうということで、まず、味噌と醤油、続いて梅干と、それぞれ良心的なメーカーに委託しての試作をはじめました。

すると、味噌や醤油は、異常と思われるほど盛んな発酵が認められました。高純度塩との違いは明らかで、「海の精」にバランスよく含まれる無機成分(ミネラル)が発酵を助け、酵母菌や乳酸菌の働きを活性化したのが一目瞭然でした。試作の仕上がりは上々で、会員の方々に味見をお願いすると、大変な評判となります。

そして、「海の精あらしお」が誕生した翌1985年(昭和60年)には、塩専売法が一部改正され、自家消費用塩を用いた加工食品を製造し、自由に販売することが認められます。そこから現在の海の精ブランド商品の広がりにつながる新しい展開がスタートしました。

明治時代から続く“御用蔵”としての役割

味噌・醤油の製造試験をお願いしたのは、明治35年創業の埼玉県神泉村にあるヤマキ醸造株式会社。初代は、群馬で養蚕学校をやりながら、米や大豆、小麦を作り、近隣の農家に味噌や醤油の作り方も教えていたそうです。

しかし、農家の方にはなかなかうまく作ることができなかったようで、徐々に、原料を持ってきては「味噌や醤油にして欲しい」と言う要望が来るようになります。これが、今も掲げる“御用蔵”の走りとなり、1969年(昭和44年)頃から、御用蔵として認知されるようになりました。
戦後、日本がゼロからスタートし復興していく中で、食品業界の流れが大きく変わります。高度経済成長の時代を迎え、テレビや洗濯機、自動車などが徐々に普及し、だんだんと日本の生活様式も便利に、そしてより豊かになります。

昭和40年代になると、社会が豊かになり、スーパーマーケットが一般化していきます。それまで地元の商店で量り売りされていた味噌も袋詰めされ、スーパーで買われることが多くなりました。メーカーが新発売する商品もスーパーでの販売に合わせ、食品添加物や低コストに耐えられる原料を使って、大量生産できる画一的な商品が求められるようになっていきます。そして農産物においても、農薬、化学肥料、除草剤を使うことで、面倒な堆肥づくりをしなくても育つ、効率重視の農業が主流になりました。こうして、食卓から“自然”が失われはじめると、さまざまな健康被害が広がり社会問題となります。そして、疑念を持った一部の消費者たちが、食に自然を求めるようになっていきました。

海の精ブランド食品初の「玄米味噌」

まだ伝統海塩「海の精」を自由に販売することができなかった頃、「食べ物こそが生命を永らえる糧だ」という考えで一致し、自然な流れで結びついたヤマキ醸造と海の精。塩は「海の精」を使い、伝統製法で味噌や醤油を製造してもらい、それを海の精ブランド商品として販売する独占的な契約が結ばれました。

そして、はじめて開発された商品が「玄米味噌」。最初はごく少量生産で、販売できるまでの量が仕込めるまでに5年近くかかりました。マクロビオティックの考え方では、白米よりも玄米です。しかし、玄米食はまったく浸透していませんでした。「玄米はおいしくない」という声が多く、味噌の原料としても、釜での蒸し方が確立されておらず、「海の精 玄米味噌」の試作はとても難しいものでした。

「試作を開始した当初、玄米を水の中に入れると、ぷくぷくといくらか呼吸をしてきたのです。もう40年ほど前のことですが、玄米は生きているんだなと実感した驚きの出来事だったことを今でも鮮明に覚えています。」と木谷代表は当時を振り返ります。

玄米は、白米と比べ、ビタミン・ミネラル・食物繊維が豊富で、皮ごと食べることで高い栄養価が摂れます。そのため、農薬不使用の玄米を使用することにしました。「原料を預かって、味噌や醤油を製造する」という御用蔵として製造委託を受ける中から多くの生産者と出会い、ヤマキ醸造にとっても現在の原料のこだわりへとつながっていきました。

おいしい自然の水を求めて

国産大豆は、国内の大豆使用量のわずか5%以下。海の精の味噌はそうした希少な国産大豆を使用しています。しかも、契約農家で栽培した生産者の顔が見える大豆のみを使っています。もちろん米も同様です。

仕込みには、水も重要な役割を果たします。一番おいしい安全な水を選んで使うために、もともと埼玉県本庄市にあった工場を、神泉村に移します。自然のものを作るには、おいしい水、おいしい空気が必須で、自然の中で作るに越したことはありません。「海の精 玄米味噌」は秩父山系城峯山の標高800mの採水地から湧き出る“神泉の名水”を使用しています。長い年月をかけて、森林に降り注ぐ雨や雪が秩父古生層の自然のフィルターを浸透し、地中深くの水源からこんこんと湧き出てくる天然水です。

秩父山系城峯山の標高800mの採水地から湧き出る“神泉の名水”

そして、あまり知られていないことですが、高含塩調味料である味噌の基礎を決めてしまうのが、実は「塩」なのです。かつて日本の味噌は、日本の伝統海塩を使っていました。純度の高い外国産の天日塩では、その味は再現されません。海水由来のニガリ成分を含んだ伝統海塩「海の精」こそが、味噌に奥深く、まろやかな塩味を与えてくれます。

“生(なま)”だからこそ味わえる、新鮮な味と香り

発酵に必要な菌は酵母菌と乳酸菌。杉桶の中に住みついているだけでなく、空気中にもいっぱいいます。それらの微生物が米のデンプン質を糖化し、米と大豆のタンパク質を消化しやすいアミノ酸に分解して、おだやかな甘味と旨味を醸し出します。先代より受け継いだ杉桶の中には約100年前から使っている古いものもあり、杉桶の中に住み着いている菌は、冬場に仕込みをすることで、暖かくなるにつれて活動をはじめ、自然と発酵がはじまります。はじめに乳酸菌が活躍し、次に酵母菌による発酵がはじまります。そして塩が、酵母菌や乳酸菌といった微生物の働きをコントロールしているのです。

四季の自然な気候の変化の内に、1年以上、杉桶の中でゆっくりと発酵熟成する昔ながらの天然醸造法。また、季節の移り変わりによる寒暖の差が、微生物の活動に変化を与え、天然醸造ならではの豊かな風味をもたらしてくれます。

杉樽で1年以上じっくり熟成

また、加熱処理をしていない“生(なま)”仕上げなので、発酵段階で生まれた有用な酵母菌や乳酸菌と酵素が生きています。それらは私たちの体の中の善玉菌の働きを助け、毎日の健康づくりに役立ちます。

こうして、今や海の精の人気商品となった「玄米味噌」は誕生しました。「海の精 玄米味噌」の魅力は数多くあります。単なる価格の高さ・安さでなく、原料に対するこだわりや伝統製法に対するこだわり、本物の発酵食品を提供するというこだわりなど、すべてを含めて、心から喜んでいただける価値ある味噌をこれからもお届けします。