クリストファー・ドウソンさま

日本食普及の功労者として、農林水産大臣功労賞を受賞されたクリストファー・ドウソンさん。
味噌汁のおいしさに出会ってからというものの、伝統調味料の魅力を伝えようと、18年間に渡って日本から世界へと発信されて来ました。その後ロンドンに拠点を移し、現在では世界32カ国に“日本食”を輸出されています。一番の売れ筋はなんと「インスタント味噌汁」で、中には、味噌を求めて車で買い付けに来る方もいらっしゃるとのこと。また、「たまり醤油」は旨みが強いため、オリーブオイルとの相性が抜群で、ソース感覚で広く使われているそうです。

こうして世界中の食卓で“日本食”が愛されるようになったのは、クリストファー・ドウソンさんのおかげと言っても過言ではありません。今回は、節子夫人とご一緒に、28年ぶりに海の精大島製塩場にいらっしゃいました。

ずっと本物の塩「海の精」

80年代前半に本物の塩を探していました。当時は、本物の塩なんてほとんどありませんでしたので。
“海の精”の存在を知って、すぐに製造元を見に行きたかった。商品の顔だけじゃなくて、いつも作っている人の顔を見て、どうやって作っているのかを自分の目で見て確かめるんです。高く積んだブロックに海水を流していた30年前。あの光景を見てから日本での18年間、イギリスで11年間、ずっと「海の精」を使っています。

世の中は減塩、減塩と、塩は「毒」であるとでも言うようなおかしな考えが広まっています。誰も塩の大切さを分かっていません。変な塩はカットしたほうがいいけれど、どれだけ塩がカラダに影響を与えるのか分かっていない。分からないんです。牛乳=カルシウムというのと同じように、潜在意識に「減塩」が植え付けられてしまっています。むしろ塩でしっかり食べたら、元気になるのに。
日本人はみんな、調味料はただ味をつけるものとしか考えていない気がします。塩も、醤油も、味噌もどこのものでも同じと思っているんです。本物の調味料を使うだけで、どれだけカラダが元気になるのか分かっていないんです。

だけど今日は、海の精の“給食”にビックリしました。植物性の材料のみで、伝統調味料だけを使って調理されている。しかも、社員が社員の作った温かいごはんを食べる。海の精の塩を使っているだけでおいしさや摂れるミネラル分が違うはずなのに、その上、炊きたてのごはんが給食に出るなんて!
これで社員がみんな元気になると思います。これが一番のごはんです。
僕も毎日あの給食を食べたいから、僕の机を用意してください(笑)。

味噌汁のおいしさにびっくり

僕はニュージーランド生まれで、歳まではずっと肉食でした。
ちょうどベトナム戦争があって、反戦運動が盛んで、僕も世界平和のために何か出来ないかと考えたのです。

知り合いで菜食を始めた人もいて、僕も始めたけれど、世界平和のためにまず考えたのは農業のこと。その時はどこの畑も農薬を大量に使っていたから、有機農業がいいと思っていました。だから1年半ニュージーランドを回って、有機農業をしている人の手伝いをしながら、しばらく勉強をしました。その後、もっと有機農業を勉強しようと思って、36時間飛行機乗ってイギリスに渡りました。

ニュージーランドにいる頃から菜食主義を始めたけれど、西洋の菜食料理は物足りないので、ずっと続けていけるかどうか、ちょっと不安がありました。そんな時、イギリスの友達が、“味噌汁”を紹介してくれたんです。それを飲んでみて、「あーこれならいける!」って思いました。子どもの時、食事は肉中心で軽いものがなかったから、肉汁(グレイビー)を飲んでいたんですよ。肉が食べたいとは思わなかったけれど、植物性で肉汁に近いものはとても嬉しかったです。これが、僕の味噌汁との出会いです。

日本の生産者のために

農家の人は野菜を作るのにどうしても手いっぱい。本当はもっと有機農業の勉強もしたかったけれど、やっぱり僕は農業自体をやるよりも、農家の人のために、有機商品の販売をしようと思いました。
イギリスで自然食品店をしていた時、日本には味噌だけでなく色々な面白い商品がたくさんあることが分かりました。そこで、こんな素晴らしい食品がある国ってどんな所なんだろうと思い、日本に行こうと決めたんです。そこから僕のすべてが始まりました。

1979年、とりあえず2ヶ月間と思い、日本に旅立ちました。15件ほどの日本の生産者を回ってみたら、これがすごく面白かった。巨大な木の樽で作っている味噌を見て圧倒されたり、本当に面白かったんです。
いったんイギリスに戻ったものの、もっと日本食文化の勉強がしたくて、それから18年間を日本で過ごしました。

日本の生産者たちのためにお手伝いがしたくて、オーガニック・マクロビオティック食品の輸出会社で働きました。働くと言うよりは、助け合うためにやらなければならないと思っていました。日本の生産者のために、日本の生産者の作っているものを海外に紹介しなくてはいけないと。僕の仕事はこれだ!と思いました。
日本語なんて全然話せませんでした。でも、大切なのは気持ち。心で、人の作っているものを想えば、自然と言いたいことも伝わってくるものです。

最高のものを世界中へ

本物の調味料を伝えるために、たまり醤油や八丁味噌、みりんなど様々な伝統調味料を輸出できるようにしました。ヨーロッパは食品の輸入に関して、かなり規制が厳しいです。けれど、発酵食品である伝統食品を大切にして欲しい!しかしこれらの伝統食品たちは近々消えてしまう恐れのあるものばかりです。日本食文化を世界中に紹介するためには、今頑張るしかありません。

また、アメリカで活躍していたマクロビオティックの久司道夫先生のために、日本から商品を提供したりしました。その時に、マクロビオティックの勉強もしたものです。でも、僕は先生になることが目的ではありません。良い商品の販売が目的です。

良い食べ物がないと、みんなが元気になりません。世界中の台所のものがもっと良くなるために、1998年、イギリスに拠点を移しました。「クリアスプリング」という僕の会社から、味噌、醤油、海藻、お茶、乾麺などの食品を32カ国に出荷しています。そのうちの65%はイギリスにですが、体に良くて、おいしくて、もちろん化学調味料、添加物、着色料、保存料、精製された砂糖は一切使用していないものだけを世界中に販売しています。

「農林水産大臣功労賞」とこれから

クリアスプリングで一番売れているのは、「インスタント味噌汁」。
辞書に“味噌”という言葉は載っていなかったけれど、いまイギリスでは“味噌”は普通の言葉になりました。僕も味噌汁大好きだから毎日飲んでいるけれど、日本食は本当にブームになっています。

2007年、「これだけ日本の食品を海外に広めた人はいない」ということで、農林水産大臣功労賞をいただきました。前年に(元)小泉首相が、輸出拡大の政策を出していたこともあってだと思いますが、これからも頑張るという意味でも受賞できて良かったです。時代はこれから“本物”を求めてくるはず。だから、「クリアスプリング」を世界中の有機食品のブランドにしたいと思っています。

人間は穀類で充分栄養をとることができる! もう一回皆さんに、穀物菜食で充分ってことを伝えたいのです。これからの人類のために、みんなのお腹を健康にしていきます。

■クリストファー・ドウソン プロフィール

1977年にイギリスで日本食品の販売、1980年より日本のオーガニック・マクロビオティック食品の輸出会社にて、地域の特色ある素材にこだわった伝統食品の輸出に尽力。1993年、イギリスの食品の販売企業クリアスプリング社を買収。経営を譲り受け、日本からの食品輸入事業を主力にして再構築。欧州各国、中東、東南アジアへの輸出にも取り組んでいる。また、日本の食材について紹介する書籍の発行や、ウェブサイトにおいて日本食に関する豊富な情報を提供するなど、日本食普及に貢献。

来訪日:2010年3月8日

インタビュアー 下田ちひろ


日本のオーガニック・マクロビオティック食品の輸出会社クリアスプリング社社長。


弊社会長・村上とともに。


植物性の材料だけで、毎日手づくりしている“給食”。この海の精の給食にとても感動されていました。


社員が大島で漬けたたくあんを試食されています。


立体塩田前の海をバックに。天気が良いと海の向こうにとなりの島が見えます。


黒潮が運ぶ清麗な海水だけが原料です。ここの下から取水しています。


国立公園内の立体塩田の下に広がる海から海水を汲みあげています。


海水を濃縮する立体塩田の前で、ご夫妻とともに弊社会長・社長。


平釜で塩を結晶化させた後、この採塩樽で塩の成分を整えます。上の水分がにがりです。


千波工場では、「海の晶」の製造と、塩の検品を行っています。


じっくり時間をかけてできる完全天日塩「海の晶」を舐めると、ゆっくり溶けてマイルドに感じられます。


カメラを向けるとすぐポーズをとってくれました。


一つ一つ丁寧に塩の検品を行っています。